老後2,000万円、医療費が怖くて使えない?高額療養費で自己負担はいくら?【2026年改正】
老後に2,000万円あったとしても、こんな不安はありませんか。
「大きな病気をしたら、何百万円も必要になるかもしれない」
「それなら怖くて老後資金を使えない……」
僕も、老後のお金を考えていて気になったところです。
今週のYouTubeでは、夫婦2人・65歳からという条件で、生活費によって老後2,000万円が何年もつのかを計算しました。
老後2,000万円、何年もつ?|夫婦2人・65歳から計算してみた
でも実際の老後には、毎月の生活費だけではありません。
病気や入院など、「いつ・いくら必要になるか分からないお金」もあります。
そこで今回は、
「もし医療費が高額になったら、公的制度でどこまで守られるのか?」
を、2026年9月時点の制度でできるだけ分かりやすく整理します。
まず、これだけ覚えてください。
① 医療費が高くなっても「1か月の上限」がある
② 2026年8月から「1年間の上限」もできた
③ ただし、個室代・食事代などは別
この3つが分かれば、高額療養費制度の大枠はかなり理解できます。
結論|医療費100万円でも、100万円を払うわけではない
まず、一番分かりやすい例から見てみます。
厚生労働省では、
70歳未満・年収約370万〜510万円の人
が、保険診療で医療費100万円の治療を受けたケースを紹介しています。
3割負担なら、単純に考えると30万円です。
でも、高額療養費制度があります。
病院でかかった医療費
100万円
↓
3割負担なら30万円
↓
高額療養費を使うと
約9万3,000円
※2026年8月以降・70歳未満・年収約370万〜510万円・保険診療の場合
正確に計算すると、
85,800円+(100万円-286,000円)×1%=92,940円
です。
つまり、
「100万円の治療をした=貯金が100万円減る」
ではありません。
ここを知っているだけでも、医療費の見え方はかなり変わります。
ただし、約9.3万円は全員共通ではありません。
年齢と所得によって、自分が払う上限は変わります。
そもそも高額療養費って何?
名前は難しいですが、意味はシンプルです。
「保険がきく医療費が高額になっても、自己負担が青天井にならない仕組み」
です。
1か月に支払う保険診療の自己負担には、年齢や所得に応じて上限があります。
上限を超えた部分について、高額療養費として負担が軽くなります。
上限は人によって違う|70歳未満の主なパターン
ここが大事です。
「高額療養費なら、誰でも月9万円くらい」ではありません。
2026年8月〜2027年7月の70歳未満の主な区分は、次のようになっています。
| 年収の目安 | 1か月の上限 | 多数回該当 | 年間上限 |
|---|---|---|---|
| 約1,160万円以上 | 270,300円+ (医療費-901,000円)×1% | 140,100円 | 168万円 |
| 約770万〜1,160万円 | 179,100円+ (医療費-597,000円)×1% | 93,000円 | 111万円 |
| 約370万〜770万円 | 85,800円+ (医療費-286,000円)×1% | 44,400円 | 53万円 |
| 約370万円以下 | 61,500円 | 44,400円 | 53万円※ |
| 住民税非課税 | 36,900円 | 24,600円 | 29万円 |
※年収約200万円未満など一定の条件に該当する人には、年間41万円の上限が適用される仕組みがあります。個別の適用は加入している保険者へ確認してください。
かなり違いますよね。
だから、まずは、
「自分はどの所得区分に近い?」
を見ることが大切です。
70歳以上には、さらに別のパターンがある
老後の医療費を考えるなら、ここも知っておきたいところです。
70歳以上では、所得によって「外来だけ」の上限もあります。
たとえば、現役並み所得者ではない一般的な所得区分では、2026年8月以降は次のようになります。
| 70歳以上・一般区分の例 | 上限 |
|---|---|
| 外来だけ・1か月 | 22,000円 |
| 外来だけ・1年間 | 216,000円 |
| 外来+入院・1か月 | 61,500円 |
| 年間上限 | 53万円※ |
※所得区分によって上限は異なります。現役並み所得者には別の上限があります。
住民税非課税なら、さらに低い上限がある
| 70歳以上・住民税非課税 | 上限 |
|---|---|
| 外来だけ・1か月 | 11,000円 |
| 外来だけ・1年間 | 96,000円 |
| 外来+入院・1か月 | 25,700円 |
| 年間上限 | 29万円 |
さらに所得が一定以下の場合は、外来月8,000円、外来+入院月15,700円、年間18万円という区分もあります。
つまり、高額療養費は「年齢」と「所得」で上限が変わる。
まずはこれを覚えておけば大丈夫です。
2026年8月、何が変わった?
今回の記事で特に重要なのが、2026年8月の制度改正です。
難しい制度改正ですが、大きく分けると3つです。
| 2026年7月まで | 2026年8月から | |
|---|---|---|
| 1か月の上限 | 以前の金額 | 多くの区分で引き上げ |
| 年間上限 | なし | 新しく導入 |
| 多数回該当 | あり | 金額は原則据え置き |
つまり、
「1か月だけ高額な治療をした人」の上限は少し上がる。
その一方で、
「長く治療が続く人」には新しく年間上限を作る。
という見直しです。
月の上限はどれくらい変わった?
たとえば年収約370万〜770万円の場合です。
2026年7月まで
80,100円+一定額
↓
2026年8月から
85,800円+一定額
基本部分で5,700円上がりました。
ほかの所得区分でも月額上限が見直されています。
2026年8月からできた「年間上限」って何?
今回の改正で、僕が特に知っておきたいと思ったのがここです。
これまでは基本的に、
「1か月でいくらまで」
という仕組みでした。
でも、治療が半年、1年と続いたらどうでしょうか。
1か月ごとの上限があっても、毎月の負担は積み重なります。
そこで2026年8月から、
「1年間で、ここまで」
という上限が新しくできました。
年収約370万〜770万円なら、年間53万円
たとえば年収約370万〜770万円の区分では、
高額療養費の対象になる自己負担は
1年間で
53万円
が上限
です。
ここでいう「1年間」は、
8月1日〜翌年7月31日
です。
1月〜12月ではありません。
厚生労働省の資料では、長期療養で従来なら年間の自己負担が約76.7万円となるケースが、年間上限によって53万円になる例が示されています。
年間53万円なら、医療費が何百万円でも53万円?
ここは僕も最初に引っかかったところです。
かなり簡単にいうと、
年収約370万〜770万円の区分なら、高額療養費の対象になる保険診療分の年間自己負担には53万円の上限があります。
つまり、長期治療で保険診療の医療費自体が何百万円、何千万円と大きくなったとしても、
高額療養費の対象部分については、自己負担が青天井で増え続けるわけではありません。
ただし、ここで絶対に間違えたくないことがあります。
実際に財布から出ていくお金すべてが53万円以内になる、という意味ではありません。
高額療養費の対象にならない費用があるからです。
「多数回該当」は何?
長く治療する人には、もう一つ仕組みがあります。
名前は「多数回該当」です。
名前は難しいですが、意味はシンプルです。
直近12か月で、高額療養費に3回該当
↓
4回目から、1か月の上限がさらに低くなる
という仕組みです。
たとえば年収約370万〜770万円の場合は、
4回目以降:44,400円
です。
今回の2026年8月改正でも、この44,400円は据え置かれています。
「年間上限」と「多数回該当」はどう違う?
ここはややこしいですよね。
僕も最初は分かりにくかったです。笑
超シンプルに分けると、こうです。
| 何を見る? | どうなる? | |
|---|---|---|
| 多数回該当 | 高額になった月が何回あった? | 4回目以降の月の上限が下がる |
| 年間上限 | 1年間でいくら負担した? | 年間の合計に上限ができる |
どちらも、
長く治療する人の負担が重くなりすぎないようにする仕組み
と考えれば大丈夫です。
2027年8月にも、さらに制度変更が予定されている
今回の改正は2026年8月で終わりではありません。
2027年8月から、所得区分をさらに細かく分ける変更が予定されています。
現在の「年収約370万〜770万円」という区分も、より細かく分けられます。
また、年収約200万円未満の課税世帯については、多数回該当の上限を、
44,400円 → 34,500円
へ引き下げる予定です。
制度は今後も変わるため、実際に利用する時点では厚生労働省や加入している保険者の最新情報を確認してください。
でも「年間53万円あれば医療費は全部大丈夫」ではない
ここが本当に大事です。
高額療養費がカバーするのは、基本的に公的医療保険がきく医療費です。
入院すると、それ以外のお金もかかることがあります。
高額療養費の対象にならない主な費用
| 費用 | 高額療養費 |
|---|---|
| 差額ベッド代 | 対象外 |
| 入院中の食事代 | 対象外 |
| 先進医療の技術料 | 対象外 |
| その他の保険外診療 | 対象外 |
| 病院までの交通費 | 高額療養費の対象外 |
| パジャマ・洗面用品など | 対象外 |
| 家族の交通費・付き添い費用 | 対象外 |
協会けんぽも、保険外診療・食事代・差額ベッド代などは高額療養費の対象外と案内しています。
また先進医療では、通常の保険診療部分には高額療養費が使えますが、先進医療そのものの技術料は全額自己負担です。
だから、
「年間53万円だけあれば絶対大丈夫」
ではありません。
一方で、
「大病したら医療費だけで何百万円、何千万円も全部自分で払う」
とも限りません。
この間を理解することが大切です。
差額ベッド代は必ず払うわけではない
差額ベッド代についても少し補足します。
患者自身が希望して個室などの特別な病室を選んだ場合には、追加料金がかかることがあります。
一方で、治療上の必要などから病院側の判断で個室になった場合など、差額ベッド代を請求できないケースもあります。
入院するときは、
「この部屋は差額ベッド代がかかりますか?」
と確認しておくと安心です。
介護費用は、高額療養費とは別
もう一つ、老後のお金で心配なのが介護です。
介護サービスの費用は、高額療養費とは別に考えます。
ただし介護にも、
「高額介護サービス費」
があります。
さらに医療と介護の両方の負担が大きくなった場合には、
「高額医療・高額介護合算療養費制度」
もあります。
今回は詳しく入りませんが、
医療も介護も全部、自分の貯金だけで青天井に払うわけではない
ことは知っておいていいと思います。
老後2,000万円を、医療費のために全部残す必要はある?
ここが今回、一番考えたかったところです。
老後に2,000万円あっても、
「病気になったらいくら必要か分からない」
と思っていたら、怖くて使えません。
でも今回調べてみると、少なくとも保険診療については、
- 1か月の上限
- 年間の上限
- 長期治療向けの多数回該当
があります。
一方で、
- 差額ベッド代
- 食事代
- 保険外診療
- 交通費や日用品
- 介護費用
などは別に考える必要があります。
つまり大切なのは、
「全部怖いから残す」でもなく、
「制度があるから何も備えなくていい」でもない。
公的制度で守られる範囲を知って、
自分で備えるお金と、使っていいお金を分ける。
僕は、この考え方のほうが老後のお金を使いやすくなると思います。
老後のお金が足りなくなったときの制度もある
高額療養費だけでなく、医療費や介護費、生活費などが重くなった場合には、ほかにも公的制度があります。
老後にお金がなくなったらどうなる?年金だけで生活できないときの公的制度と相談先
制度があるから準備不要ではありません。
でも、何も知らないより、
「こういうときには、この制度がある」
と知っている方が、必要以上に不安を大きくせずに済みます。
今日の小さな作戦|自分の「上限」を見るだけ
今日は難しい医療費計算をしなくて大丈夫です。
確認するのは2つだけです。
① 自分の年齢
② 自分のおおよその所得区分
この2つが分かれば、厚生労働省の表で、
「自分なら1か月と1年で、だいたいどれくらいが上限?」
を確認できます。
高額療養費について分からない場合は、加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険、後期高齢者医療広域連合などに確認できます。
「病気になったらいくらかかるか分からない」
から、
「保険診療なら、まずこのくらいが目安」
へ。
まずそこまで分かるだけでも、不安はかなり具体的になると思います。
よくある質問
医療費100万円なら、本当に約9.3万円ですか?
全員ではありません。70歳未満・年収約370万〜510万円の人が、2026年8月以降に保険診療100万円を受けた場合の厚生労働省の例では、自己負担は約92,940円です。年齢や所得などで上限は変わります。
年間上限53万円なら、病院に払うお金は全部53万円以内ですか?
違います。53万円は、高額療養費の対象になる保険診療分の自己負担についての年間上限です。差額ベッド代、食事代、先進医療の技術料などは別です。
年間上限の「1年間」は1月〜12月ですか?
違います。高額療養費の年間上限では、8月1日〜翌年7月31日を1年間として計算します。
多数回該当と年間上限は同じですか?
別です。多数回該当は、直近12か月で高額療養費に何回該当したかを見る仕組みです。年間上限は、8月〜翌7月の対象自己負担が年間でいくら積み上がったかを見る仕組みです。
高額療養費があれば、老後の医療費の備えはいりませんか?
そうとは言えません。差額ベッド代や食事代、保険外診療など制度の対象外となる支出があります。公的制度で守られる範囲を知ったうえで、自分で備える部分を考えることが大切です。
まとめ|医療費を「分からない怖さ」のままにしない
今回の記事で、まず覚えてほしいのは3つです。
① 医療費が高くても、1か月の上限がある
② 2026年8月から、1年間の上限もできた
③ 個室代・食事代などは別
さらに、上限は年齢と所得によって変わります。
年収約370万〜770万円なら、2026年8月以降の年間上限は53万円です。
70歳以上なら、所得によって外来だけの別上限もあります。
病気になるかどうかは分かりません。
何歳で入院するかも分かりません。
でも、制度は調べれば分かります。
「何も分からないから怖い」
を、
「ここまでは制度で守られる。ここは自分で備える」
に変える。
そのうえで、老後のお金を旅行や趣味、楽しい時間にも使えるようにする。
不安を知識に、知識を余裕に。
まずは、自分の上限を一度確認するところから始めてみましょう。
参考情報
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
- 厚生労働省「先進医療の概要について」
- 全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき」
公的情報確認日:2026年9月29日
※この記事は2026年9月時点の公的情報をもとに、高額療養費制度の一般的な仕組みを整理しています。実際の自己負担額、所得区分、申請方法は、年齢、所得、加入している医療保険、治療内容などによって異なります。個別の負担額は加入している保険者へご確認ください。
