160万円の壁とは?
最近よく聞く「160万円の壁」。
でも正直、こう感じませんか?
- 結局なにが160万円なの?
- いつから?もう始まってる?
- 誰がどれくらい得するの?
- 老後にどう関係あるの?
この記事は、難しい言葉をできるだけ使わずに、控除の仕組み→何が変わったか→いつから→老後との関係まで一気に整理します。
この記事で得られること(老後にどう関わる?)
- 「160万円の壁」の正体(どの控除が足されて160になるのか)
- いつから適用されるのか(年末調整との関係)
- 誰が得するのか(対象人数の目安も)
- 老後の「年金+働く」とどうつながるか(働き方の設計に効く)
- よくある誤解(住民税・社会保険は別 など)
老後は「年金だけで足りるか不安だから、少し働く」という人が増えています。
そのとき、税金の“壁”を勘違いすると、手取りの見込みがズレて家計が苦しくなることもあります。
まず結論:160万円の壁を“一言で言うと”
一言でいうと:
「所得税がかからない年収ライン(目安)が、単身の給与所得者で“160万円程度”まで広がった」という話です。
ポイントはここです。
- “税金がゼロ”になるのは主に「所得税」(住民税・社会保険は別)
- “給与だけ”の人の目安(年金や副業があると合算で変わる)
- 160万円は「制度名」ではなく、控除の合計から出てくる“結果の数字”
いちばん大事:控除の仕組み(これが分かると全部スッキリ)
給与の所得税は、ざっくりこう計算します。
給与収入 →(まず引く)→ 給与所得控除 →(残りが)→ 給与所得
給与所得 →(さらに引く)→ 基礎控除などの所得控除 →(残りが)→ 課税所得
課税所得が0なら、所得税は0です。
160万円が出てくる“超シンプル式”
単身・給与のみ・控除が基本だけ、という前提でざっくり言うと…
- 給与所得控除の最低保障額:65万円
- 基礎控除:最大95万円(所得が低い層)
だから…
65万円 + 95万円 = 160万円
つまり、年収160万円くらいまでなら、控除で課税所得が0になりやすく、所得税がかからない目安になる、というわけです。
例:年収160万円(給与のみ)のイメージ
- 年収160万円 − 給与所得控除65万円 = 給与所得95万円
- 給与所得95万円 − 基礎控除95万円 = 課税所得0
- → 所得税0になりやすい
※ただし、実際の計算は個々の条件(社会保険料控除・扶養・年金の有無等)で変わります。
何が変わった?(“どの部分が増えたか”が分かればOK)
今回の見直しの中心は、ざっくりこの3点です。
- 基礎控除:48万円 → 58万円へ(まず10万円増)
- 給与所得控除の最低保障額:55万円 → 65万円へ(10万円増)
- 基礎控除の上乗せ特例:所得に応じてさらに上乗せ(低~中所得を中心に)
「上乗せ特例」は、ざっくり言うと所得に応じて“追加の控除”を足して、物価高の中の負担を軽くしようという設計です。
上乗せはどれくらい?(目安)
- 〜200万円相当:上乗せ大きめ(低所得配慮)
- 200〜850万円相当:段階的に上乗せ(中所得まで広く)
- 850万円超:上乗せなし(高所得優遇にならない工夫)
いつから施行?(ここが一番の勘違いポイント)
「もう始まってるの?」問題は、ここを押さえればOKです。
- 原則:令和7年12月1日施行
- 令和7年分(2025年分)以後の所得税に適用
- 給与所得者は、2025年12月の年末調整から反映されるイメージ
つまり、「年の途中で急に毎月変わる」というより、年末調整で調整される(会社員の人はここが大きい)という理解が近いです。
どういう経緯で通った?(ざっくり時系列)
難しく見えますが、流れはシンプルにまとめられます。
- 2024年11月ごろから、いわゆる「103万円の壁」などを巡る協議が本格化
- 2024年12月:税制改正大綱が決まり、政府が大綱を閣議決定
- 2025年2月:法案が国会に提出
- 2025年2月末:協議・質疑を踏まえ、基礎控除の“上乗せ特例”が追加(修正)
- 2025年3月:修正を経て可決・成立
- 2025年12月:年末調整から反映(実務に影響)
一言でいうと、「物価高の負担軽減」+「働き控え(就業調整)対策」を狙って、国会審議の中で修正も入った、という経緯です。
どのくらいの人が得する?(対象の目安)
公表資料では、基礎控除の上乗せ特例の対象が“納税者の8割強(約4,600万人)”という目安が示されています。
さらに、単身の給与所得者のモデルでは、対象階層で所得税の負担が「2〜4万円」程度軽くなる目安も示されています(あくまでモデル計算)。
老後にどう関係する?(結論:働き方の“設計”がしやすくなる)
老後はこういうケースで効いてきます。
- 年金+パート収入で生活を組み立てる
- 配偶者(または自分)が扶養の範囲を意識して働く
- 「働くほど手取りが増えるはずなのに、壁でモヤる」を減らしたい
ただし注意点があります。
- 年金(公的年金等)と給与は合算されるため、給与が160万円以内でも、年金があると課税になる場合があります
- 住民税の非課税ラインは別(自治体・世帯条件で変わる)
- 社会保険(106万/130万等)の“壁”は別物。税がゼロでも保険料が増えることはあります
よくある誤解(ここで損しがち)
- 誤解1:「160万円まで稼いでも税金ゼロ」→ 所得税の目安。年金や副業があると変わる
- 誤解2:「住民税もゼロ」→ 住民税は別計算。均等割などもあり得る
- 誤解3:「社会保険も関係ない」→ 税と社会保険は別。手取り逆転が起こりやすいのはむしろ社会保険側
今すぐできるチェック(“見える化”が最強)
- 自分(または配偶者)の収入が「給与だけ」か、年金・副業もあるかを整理
- 会社員なら、年末調整の控除書類(扶養・保険料など)を正しく出す
- 老後は「年金+給与」を合算で試算(ざっくりでOK)
※このブログでは、社会保険側の壁(いわゆる“106万/130万”等)や、別の最新トピックも整理していきます。
まとめ:160万円の壁は“控除の足し算”でできている
- 160万円の壁は制度名ではなく、控除の合計から出る“結果の数字”
- ポイントは、給与所得控除(最低65万)+基礎控除(最大95万)のイメージ
- 2025年12月の年末調整から反映される理解が近い
- 対象は広く、納税者の8割強(約4,600万人)が目安
- 老後は「年金+働く」が増えるので、合算での見える化が重要
参考資料・リンク
- 国税庁:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(施行日・改正概要)
- 財務省:基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設(対象人数・減税目安)
- 財務省 広報誌「ファイナンス」:令和7年度税制改正の経緯・背景(時系列・目的)
- 自由民主党・公明党:基礎控除の特例の創設について(上乗せ特例の考え方)
免責事項
本記事は、公的機関等の情報をもとに一般的な内容を分かりやすく整理したもので、特定の制度利用や税務判断を推奨するものではありません。税額や扶養判定、年末調整・確定申告の要否は個別事情で変わります。必要に応じて、勤務先の担当部署、税務署、税理士、社会保険労務士等の専門家へご相談ください。
更新履歴
- 初版公開:2025年12月22日
- 最終更新:2025年12月22日
