老後の住まい戦略2025|持ち家・賃貸・リフォーム・住み替えの最適解

この記事の狙い
老後の住まい選びを「支出」「安全」「身軽さ」「最期の迎え方」まで含めて総合判断できるように、一次データに基づき整理します。最後にタイプ別の結論(戸建て/マンション/賃貸)を提示します。
まず押さえる全体像

- 戸建て(持ち家):空間・庭・騒音の自由度が強み。課題は段差・老朽化・交通の便。
- 分譲マンション(持ち家):ワンフロア&管理でバリア少。課題は階段・エレベーター停止時・管理/修繕費。
- 賃貸:身軽さ・駅近への居住替えが容易。課題は高齢者受け入れや保証・見守りの条件。
- リフォーム:手すり・段差解消・浴室改修など。介護保険の住宅改修は原則20万円上限(自己負担1~3割)。
- 住み替え:60歳以上で「住み替え意向あり」は約3割。動機は「健康・体力不安」「住みにくさ」「買い物や交通の不便」。
データで見る「日本の住まいの現在地」
- 住宅全体の持ち家率は60.9%(2023年)。30年間ほぼ横ばい。
- 分譲マンションの修繕積立金の平均は約1.3万円/月(戸当たり)。長期修繕計画に基づく設定が主流。
- 高齢者の賃貸入居は拡大余地あり。オーナー側で「受け入れていない」約4割の調査も(ただし支援があれば受け入れ意向も)。
選択肢①:持ち家(戸建て)
向いている人:庭・趣味スペースを活かしたい/近所づきあいがある/地域に根差した生活を続けたい。
注意点:段差・階段・浴室の転倒リスク。屋根・外壁・給湯器などの経年更新。買い物や病院へのアクセス。
手当て:手すり・段差解消・浴室の滑り止め・出入口の拡幅など、介護保険住宅改修(上限20万円・自己負担1〜3割)の活用。ケアマネ経由で事前申請・工事後の申請が必要。
選択肢②:持ち家(分譲マンション)
向いている人:ワンフロアで移動が少ない方が安心/駅近で通院・買い物の利便性を重視/管理体制のある暮らしを好む。
注意点:月々の管理費・修繕積立金は将来増額も。近年の平均は約1.3万円/月、長期修繕計画に基づく適正化が進む。停電・災害時のエレベーター停止に備えを。
選択肢③:賃貸
向いている人:身軽に暮らしたい/駅・病院・買い物近接へ柔軟に移りたい/ライフスタイルの変化に合わせたい。
注意点:高齢者の入居可否・見守りサービス・連帯保証・家賃の将来負担。調査では受け入れに消極的なオーナーが約4割だが、見守り・居住支援で受け入れ余地あり。
リフォーム:支出編と整合しつつ、転倒・入浴のヒヤリを減らす
- 優先度の高い箇所:浴室(手すり・滑り止め・またぎ高さ低減)、トイレ(立ち座り)、玄関(段差解消)、廊下(手すり)。
- 費用感の例:浴室の安全対策は30〜60万円程度が一般的(工事内容で変動大・参考値)。
- 公的支援:介護保険の住宅改修は原則20万円上限・自己負担1〜3割。要介護度が大きく変わったときや転居時の再上限設定などの取り扱いあり(自治体で確認)。
※「住まい戦略(支出編)」も参考にしてください。
住み替え:いつ・どこへ・何のために?
動く人はどのくらい? 60歳以上で住み替え意向ありは約3割。背景は健康・体力の不安、住みにくさ、生活利便(買い物/交通)。
行き先の考え方:「駅近・平坦・医療圏内」を基本軸に、バス便・電動自転車での移動も含めて生活圏のドアtoドア時間で評価。移住先ランキング等の情報は参考に、最終判断は生活導線(病院・スーパー・親族距離)で。
最期をどこで迎えるか(参考):日本全体では病院死が依然最多だが、近年は自宅・介護施設での看取りが増加傾向。地域の在宅医療体制の整備が進む。
タイプ別の結論(迷ったらこの指針)
タイプ | おすすめ住まい | 判断のポイント |
---|---|---|
地域コミュニティ強め/庭・趣味重視 | 戸建て持ち家(段差・浴室など安全改修+見守り) | 買い物・通院アクセスを補える交通手段/改修で転倒リスク低減 |
駅近・医療・買い物の利便性重視 | 分譲マンション(低層orEV近接/管理・修繕費を織込) | 修繕積立金の将来見直し前提でキャッシュフロー試算 |
身軽さ・柔軟性重視/単身・DINKS | 賃貸(見守りサービス付/高齢者受け入れ可の物件) | 受け入れ条件(保証・見守り)と駅近での生活コストを比較 |
当面は現住居を活用 | 安全改修(介護保険住宅改修+必要箇所の有償リフォーム) | 要所だけ改修し、将来の住み替えに備え現金性を確保 |
チェックポイント
- 最寄り病院・かかりつけ医・薬局までのドアtoドア時間を測る
- 週2回の買い物動線(雨天・猛暑・降雪時の代替ルート)
- 浴室・玄関・階段の危険箇所を写真+メモ化
- 修繕積立金や固定資産税の5年後・10年後の見直し前提額で試算
- 賃貸は「高齢者受け入れ」「見守り」「保証」の3条件を確認
参考・出典(参照日:2025年8月)
- 住み替え意向:約3割(国土交通省): 資料1 / 資料2
- 介護保険住宅改修(上限20万円・自己負担1〜3割): 厚生労働省
- 持ち家率60.9%(総務省統計局 住宅・土地統計調査2023): 概要PDF
- マンション修繕積立金の平均 約1.3万円/月(国土交通省 マンション総合調査): PDF
- 在宅・施設での看取りが増加傾向(厚生労働省): 資料
- 高齢者賃貸の受入状況(民間調査の参考): プレス / 解説
- 浴室等の安全改修の費用目安(民間参考): メディカルリフォーム