お金⑦〜日本の年金の歴史〜


今回は日本の年金制度の歴史を紹介したいと思います。
日本の年金制度は、約150年にわたる歴史の中で、社会の変化や経済状況に応じて進化してきました。
以下、その主な歴史的な流れを解説します。
1.初期の年金制度(1875年〜1940年)
日本における年金制度の始まりは、1875年(明治8年)に公布された「海軍退隠令」されています。
これは、海軍軍人を対象とした退職後の生活保障を目的としたものでした。
その後、陸軍や官吏(公務員)にも同様の恩給制度が導入され、1923年(大正12年)には「恩給法」として統合されました。
民間の公的年金としては、1939年(昭和14年)に船員保険法が制定され、海上労働者を対象とした年金制度が実施されました。
さらに、1941年(昭和16年)には「労働者年金保険法」が制定され、翌年から施行されました。
これは、工場などで働く男子労働者を対象としたもので、労働力の保全強化や生産力の拡充を図る背景がありました。
1944年(昭和19年)には「厚生年金保険法」と改称され、被保険者の範囲が事務職員や女性労働者にも拡大されました。
2.国民皆年金の実施(1950年代〜1960年代)
戦後の経済復興とともに、家族構成の変化や高齢化の進行が進み、全国民を対象とした年金制度の必要性が高まりました。
1959年(昭和34年)に「国民年金法」が制定され、1961年(昭和36年)には国民年金制度が本格的に発足し、国民皆年金体制が実現しました。
これにより、自営業者や農業従事者など、それまで年金制度の対象外であった人々も年金の対象となりました。
3.年金制度の充実と改革(1970年代〜1980年代)
経済成長とともに、年金制度の充実が図られました。
1973年(昭和48年)には、年金額の物価スライド制が導入され、物価の上昇に応じて年金額が自動的に調整される仕組みが整えられました。
また、1985年(昭和60年)の改正では、全国民共通で全国民で支える「基礎年金制度」創設され、年金制度の一層の充実が図られました。
4.少子高齢化への対応と制度の見直し(1990年代〜現在)
少子高齢化の進行に伴い、年金制度の持続可能性が課題となりました。
1994年(平成6年)の改正では、年金支給開始年齢の引き上げや保険料率の見直しが行われました。
さらに、2004年(平成16年)の改正では、将来の給付と負担のバランスを確保するため、保険料率の段階的な引き上げや給付水準の調整が行われました。
5.今後の年金制度
日本の年金制度の将来については、多くの方が関心を寄せています。
少子高齢化の進行や物価の上昇などに伴い、年金制度の持続可能性や給付水準に対する不安が高まっています。
年金制度の持続可能性を高めるためにはいくつかの改革を検討・実施しなければならないでしょう。
例えば、パートタイム労働者や短時間労働者にも厚生年金の適用を広げ、保険料収入の増加を図る。
また、在職老齢基礎年金制度を見直し、高齢者の就労意欲を高めるため、働きながら年金を受給する際の調整ルールを再検討する。
などの改革が必要かもしれません。
今は将来に備えて、個人で対策をしていかなければならないと思います。
・私的年金の活用:(iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型確定拠出年金など
・資産運用:NISA(少額投資非課税制度)などを活用し、投資による資産形成を行う
・就労期間の延長:定年後も働き続けることで、収入を確保しつつ年金受給開始を送らせ、受給額を増やす
これらの対策を組み合わせることで、少しでも将来の生活資金に対する不安を軽減することができると思います。
公的年金制度は今後も存続することが考えられますが、給付額の変動に備えて、早めに個人で対策を講じることが重要です。