2025年問題
『2025年問題』とは、日本において2025年に訪れると予想されている高齢化社会の大きな転換点に関する問題です。
具体的には、日本の団塊の世代(1947〜1949年生まれの世代)が2025年までにすべて75歳以上の社会保障制度に対する負担が急増することが懸念されています。
2025年問題背景
日本では、団塊の世代が戦後の高度経済成長を支え、また人口ボリュームの大きい世代として知られています。
この世代が高齢化することで、医療や介護、年金といった社会保障サービスの需要が急激に高まると予想されています。
出典:統計局https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html(2024年10月13日)
1.団塊の世代の後期高齢化
団塊の世代が75歳以上になると、「後期高齢者」に分類されます。
75歳以上になると、医療や介護のニーズが急増すると言われており、これによって社会保障費の増加が大きな問題となります。
・後期高齢者:75歳以上の高齢者は病気や身体機能の低下により、入院や長期の医療ケアが必要になる割合が高くなる。
・要介護者の増加:75歳以上になると、日常生活のサポートが必要な「要介護」や「要支援」状態になる可能性が高まり、介護施設や訪問介護などのニーズが急増します。
2.医療費と介護費の急増
高齢化に伴い、医療と介護にかかる費用が急増します。
すでに日本の医療費は約43兆円(2024年度)に達しており、さらに介護費用も年々増加しています。
2025年にはこの支出がさらに増えると見込まれ、政府の財政や現役世代負担がさらに重くなると考えられています。
・医療費:高齢者は若年層に比べて医療費が高くなります。特に後期高齢者は病院への入院や治療が頻繁になり、医療費の大部分を占めるようになります。
・介護費用:介護保険制度が整備されていますが、2025年には利用者が急増するため、施設の不足や人手不足、さらなる負担増が懸念されます。
出典:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21509.html(2024年10月13日)
3.労働人口の減少
少子高齢化によって、現役世代の労働人口は減少しています。
高齢者が支えるための社会保障制度は、現役世代が保険料や税金を負担して維持されていますが、その負担が増加し続けると、現役世代の生活や経済活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
・労働人口の減少:高齢者が増える一方で、労働人口(15〜64歳)は減少し続けており、2025年には特に深刻化するとされています。
・支える世代の負担:社会保障制度は賦課方式(現役世代が高齢者を支える)で成り立っているため、労働人口の減少に伴い、1人あたりの負担が増加します。
4.介護人材の不足
介護分野では、すでに深刻な人手不足が問題となっています。
2025年には要介護者が大幅に増加するため、介護職員の不足がさらに顕著になると予想されています。
・介護人材不足:2025年までに約38万人の介護職員が不足すると見込まれています。このため、介護現場の負担が増大し、サービスの質の低下や過労が深刻化する可能性があります
・外国人労働者の活用:この人手不足を解消するために、外国人労働者の受け入れ拡大や介護ロボットなどの技術導入が進められていますが、根本的な解決には時間がかかるとされています。
『2025年問題』が引き起こす具体的な課題
1.医療・介護インフラの整備不足
急増する高齢者に対応するため、医療施設や介護施設の需要が高まりますが、現在のペースでは十分な施設が整備されていないとされています。
特に都市部では、介護施設の不足が深刻な問題となりつつあります。
・入院・介護施設の不足:特に都市部では介護施設や病院のベッド数が不足しており、高齢者が十分なケアが受けれていない状況が生じる可能性があります。
・在宅介護の推進:政府は在宅介護を推進していますが、在宅介護には家族の負担が大きく、支援体制が不足しています。
2.社会保障制度の財政悪化
高齢者の医療や介護にかかる費用が増加することで、国の財政負担も増大します。
現在でも日本の社会保障費は大きな割合を占めており、2025年以降はさらに財政の悪化が懸念されています。
・年金制度の持続可能性:年金制度も負担が増加し続けており、現役世代が支える形では持続が難しいとの指摘があります。改革が必要とされていますが、具体的な対策が求められています。
・介護保険制度の見直し:利用者の急増により、介護保険制度も持続可能性が問われています。保険料の引き上げやサービスの見直しが議論されています。
3.地域格差の拡大
地方では高齢化の進行が都市部よりもさらに速く、医療や介護サービスの格差が拡大する可能性があります。
医師や介護スタッフの不足が特に深刻で、地方の高齢者が十分なサービスを受けられないリスクが高まります。
『2025年問題』に対する対策
1.医療・介護連携の強化
政府は地域包括ケアシステムを推進し、地域全体で高齢者の医療者の医療や介護を支える仕組みを作ることを目指しています。
医療機関と介護施設、地域住民が連携し、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できる体制を整えることが課題です。
2.働き方改革と生涯現役社会の実現
高齢者が健康であれば、できる限り長く働き続けることができるような社会を目指すための働く方改革も進められています。
高齢者が働き続けることで、経済的自立を促進し、社会保障費の抑制にもつながると期待されています。
3.介護ロボット・AIの導入
介護の現場では、ロボット技術やAIの活用が進んでいます。これにより、介護職員の負担を軽減し、人手不足を補うことが期待されています。
出典:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209634.html(2024年10月13日)
結論
『2025年問題』は、日本社会の構造に大きな影響を及ぼす課題です。
高齢化の進行による医療や介護の需要増加、労働力不足、社会保障制度の持続可能性など、さまざまな課題に対処するためには、制度改革や技術の導入、地域社会が協力が不可欠です。
これらの課題に対して、政府や社会全体がどのように対応していくかが、今後の日本社会の在り方を左右する重要なテーマとなっています。